信号なし横断歩道の歩行者優先ルール🚶♀️法令遵守ガイド
はじめに
安全意識の高い方は既にご存知のことと思いますが、横断歩道での事故は重大な問題です。
鉄の塊が生身の人間に突っ込んで行く・・・想像しただけでも恐ろしいです。
まず、あなたが車を運転していたとしましょう。
信号のない横断歩道を目の前にした時、あなたはどのように行動しますか?
この質問に対する答えが、今後の違反や交通事故のリスクを大きく変えるきっかけになるかもしれません。
この記事では、道路交通法の正しい知識と横断歩道における適切な対応方法をご紹介します。
死亡事故事故統計 ~横断歩道とその付近~
出典:警察庁ホームページ-統計データを元に表作成
次に、警察庁の統計データを見てみましょう。統計によると死亡事故は年々減少傾向にあります。【車と人の事故】での死亡事故は2013年では1,290件、2023年11月末時点では781件です。
年ごとに比較すると事故は確かに減少していますが、それでも毎日2人以上が【車と人の事故】で命を落としていることになります。
そのうち、2023年11月末時点での横断歩道やその付近で横断中の死亡事故は233件と【車と人の事故】事故の約3割が横断歩道やその付近で起こっていることが判ります。単純計算すると、3日間の間に2人が横断歩道とその付近の事故で命を落としていることになります。
ちなみに、死亡事故全体の比較は2013年では4,388件の死亡事故がありましたが、2023年(11月末時点の年間合計)では2,378件となっています。
横断歩道での事故が多いのはなぜ?
教習所などでしっかり学んだ方は当然「歩行者優先のルール」はご存知のはずですが、歩行者優先に出来ないのは下記の理由が挙げられます。
- 道路交通法自体を忘れた
- 歩行者優先なのは知っているが「止まると迷惑だし追突される可能性」があるから止まらない
- 自分が通過した後の方が安全に渡れると思った
- 歩行者は渡らないと思った
- 歩行者が見えなかった(いないと思った)
- 免許を持ってないのでルールを知らないが自転車はよく乗る(ルール周知されていない世代)
- 外国免許からの切り替えで日本の道路交通法を知らない
少しレアな事象も考慮してリスト化してみましたが、車の運転免許を持っているほとんどの人は「歩行者優先ルール」を知っていると言っても過言ではありません。
歩行者優先と知っている方でも、危ないから/渡らないと思った、など【個人的な見解>道路交通法】となってしまっていることが大きな要因です。
信号のない横断歩道のルールは自転車の方も、電動キックボードの方にも該当します。正しい知識を身につけ安全走行を意識しましょう!
信号のない横断歩道は歩行者優先!
それでは、歩行者優先のルールがどのようなものか、また罰則なども含めご紹介します。
知らなかった方も、知っていたけど止まらなかった方も、これからは歩行者優先をしっかり意識し、安全運転をお願いいたします。
道路交通法
横断歩道の歩行者優先に関わる道路交通法第38条ではこのように記載されています。
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。
(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項)
(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
(罰則 第百十九条第一項第六号)
法律は難しい言い回しで理解するのに「わーっ」ってなってしまう方も多いですね。
要約すると以下のような感じです。
- 横断歩道等に近づく時、横断歩道やその周辺に横断しようとしている歩行者や自転車が《確実にいないと判断出来る場合を除き》、横断歩道の手前で安全に止まれるような運転をしなさい
・渡らないと思う→停止→様子見&他の歩行者確認
・見えない→徐行→再度確認
・すぐ横が道路になって死角→徐行→再度確認
・歩行者が先に行けと合図→停止(微妙なケース)
・誰がどの角度から見ても明らかに誰もいない→減速の必要なし - 横断中の歩行者や、横断しようとしている歩行者等がいた場合には、横断歩道手前で一時停止して、横断の邪魔しない
・停止線がある場合は停止線で止まる
・停止線がない場合は横断歩道手前で止まる - 横断歩道等の手前で停止している車両があった場合は、その車両よりも前に出る直前で一時停止しなさい
・一時停止してから歩行者の有無をしっかり確認 - 横断歩道の手前30mは、追い越しも追い抜きも禁止だよ
- 横断歩道はないけれど、交差点やその付近で歩行者が横断中は横断の邪魔しちゃダメだよ
↑のGIF動画はどちらも歩行者がいないパターンで作っていますが、歩行者がいなくても一時停止義務があります。どちらも結果として歩行者がいなかったと判るだけで、実際に交差点手前で停まっている車両がある場合には、その死角により歩行者の確認が不十分になります。一時停止し歩行者の有無をしっかり確認し、歩行者がいないと明らかな場合は進みましょう。
横断歩行者等妨害等違反の取り締まりは年々増加傾向
出典:警察庁ホームページ -データを元にグラフ化
実際に普段運転していても「横断歩道等の歩行者妨害等」での取り締まりを見る機会が増えました。ペーパードライバー講習中に遭遇した事例もあります。講習でしっかり教えていたおかげで歩行者優先を実行し、もちろん違反もとられませんでした。(取り締まりがなくても歩行者優先)
信号のない横断歩道への意識を持ち、正しい対処の仕方を理解すれば、30年運転してないペーパードライバーでも正しい対処ができます。
横断歩道の歩行者妨害の罰則と反則金
- 横断歩道等における歩行者等の優先
[罰則]3月以下の懲役又は5万円以下の罰金等
[反則金]大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
[点数]2点 - 横断歩道のない交差点における歩行者の優先
[罰則]3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
[反則金]大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
[点数]2点
補足:赤信号無視の場合
- 故意による赤信号無視(わざと)
[罰則]3月以下の懲役又は5万円以下の罰金等
[反則金]大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
[点数]2点 - 過失による赤信号無視(わざとではない)
[罰則]十万円以下の罰金
[反則金]大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
[点数]2点
歩行者妨害は赤信号無視と同じ反則金や違反点数です。しなわち、歩行者優先の重要性が高いという事が判り、それによって横断歩道への意識が変わるかもしれません。
この取締件数や罰金データを見て「あ、気をつけよう」と思った方は危険な思想です。
捕まるから、罰金払いたくないから気をつけるのではなく、気をつけることが既に義務なのです。車は簡単に人の命を奪ってしまいます。防御力0の歩行者は鉄の塊にはどうしたって勝てません。
一瞬で被害者やそのご家族、そして加害者とそのご家族の人生を変えてしまいます。
横断歩道での車の停止率
JAFのデータによると、2022年に信号のない横断歩道での車の停止率は約40%でした。
2016年の7.6%に比べると、雲泥の差です。
しかし、まだ40%しか止まっていません。つまり、命に関わる事故を引き起こす可能性を秘めている人たちが60%もいて今現時点でも運転しているという衝撃の結果となっています。
残りの60%が歩行者優先を実行できるには、持続的な啓発活動が必須となります。
歩行者の立場で信号のない横断歩道を考えてみよう
もし、免許や車を失って歩く機会が増えたなら、止まらない車への苛立ちや不信感、嫌悪感など抱くようになるでしょう。そう感じた時に横断歩道に対する意識が少しずつ変化してきます。
その立場になって初めて気付く事も多いです。多くのドライバーは歩行者や自転車など色んな立場を積極的に経験すべきです。
また、横断歩道は手を挙げて渡りましょう!と小さい頃に教わったと思います。
本来は、手を挙げずとも、車が止まるのを待たずとも渡れる、それが横断歩道です。しかし、現実では約6割の車が止まりません。ルールと現実に違いがあるのは、みんなの怠慢が原因です。
ひどい場合には《車が猛スピード》《渡ろうとしたらクラクションを鳴らされた》など様々です。
改めて、横断歩道のルールを確認して歩行者目線で横断歩道を意識してみてください。
まとめ
- 横断歩道は歩行者優先。歩行者がいたら手前で止まる
- 信号のない横断歩道も同様に歩行者優先
- 信号のない横断歩道で歩行者の有無が確認できない時は減速し、いつでも止まれるスピードに
- 横断歩道付近の停車車両を越える時は一時停止して、歩行者の有無を確認。必要に応じて止まる
- 横断歩道の歩行者が《絶対にいない》と明らかな場合は減速せず通行しても良い
- 横断歩道の手前30mは追い抜き追い越しが禁止
- 横断中の歩行者の邪魔しない
- 歩行者の立場になれば、横断歩道への意識が変わるかも!
- 赤信号無視と同等レベルの違反である(反則金と違反点が同じ)
横断歩道の歩行者優先Q&A
横断歩道で止まったら後続車に追突されて危ないですよね?
確かにその可能性はありますが、追突されにくい止まり方(早いうちから徐々に減速)すればその可能性をかなり減らせます。(後続車も適切な車間距離を保ち安全運転する義務があります)
自転車は歩行者じゃないから止まらなくてもいいですよね?
自転車を完全に降りている(跨ってない)時は歩行者と同じ扱いなので止まらないといけません。
ただし、片足ついて自転車にまたがっている状態では歩行者とみなされません
急に飛び出してきたら止まれないですけど?
おっしゃる通りです。しかし「急な飛び出し」を予測し、いつでも止まれるように車側が事前に減速しておくのが正解です。
他の車は誰も止まってませんけど?
地域によっては止まらない場合も多いですが、歩行者がいた場合は止まるのが義務です。見本となる車が1台でもいれば、絶対に止まる車は増えてきます。
横断歩道に気付かない場合はどうしたらいいですか?
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